二人目のお子さんのときに、社内で第1号の男性の育児休暇取得者となった渡辺さん。社内結婚した奥さまとの間にできた一人目の子どものときは、ご自分が育児休暇を取るとは夢にも思わなかったそう。一人目と二人目で、どんな変化が渡辺さんにあったのでしょう?
お答えくださった方
産経新聞 経済部記者
渡辺浩生さん(東京都:40歳)
渡辺さんの
育児休暇取得ケース
家族構成:奥さま(新聞記者)、長男(4歳9ヶ月)、長女(2歳)
長男誕生のときは、奥さまのみ1年間の育休取得
長女誕生の際、産休後から8ヶ月まで奥さまが、それ以降満1歳までの4ヶ月間を渡辺さんが育休取得
育児休暇を取るまで
一人目の子どものときも、家にいるときはおむつ替えやお風呂などの世話もしていましたし、妻の復職後は保育園の送り迎えも分担していたり、自分ではそこそこ“育児に積極的なお父さん”のつもりでいたんです。でも妻とは認識が違っていました。
妻が職業人であることも、私にとってはなんの疑問もないことだったのに、彼女は仕事を休んで育児の主体者となっていた。それなのに私は“妻の協力者”でしかなかったんですね。
二人目を妊娠したときに、妻が「育児休暇って男も取れるのよ」と言ったんです。本人は軽い気持ちだったようですが、それからいろいろ考えました。
最初はもちろん、「仕事を中断するとどうなるんだろう?」とか、「前例のないことを切り出したら、会社はどう出るのだろう?」など不安はありましたよ。でも、妻に「女はみんな出産で仕事は中断する」と言われ、「そりゃそうだな」と。前例がないことはやってみないとわからないから、考えてもしょうがない。そうして懸念材料を消していったら「取るしかない」という結論だったんです。
会社の反応
上司に切り出すときも、いろいろ頭の中で「こう言われたら、ああ言おう」とか準備していたのですが、言ってみたら「あ、そうか。いつからだ?」と(笑)。拍子抜けしましたよ。まわりも反対するでもなく、応援するでもなく、無反応に近い状態。あまりに予想外な行動だったのでどう反応していいかわからなかったのかもしれませんね(笑)。後で聞くと、私が抜けることは大変だったようですが、会社が大人の対応をしてくれる恵まれた環境だったのかもしれません。
いざ育児休暇を
取ってみて
休暇中は本当に育児にどっぷりつかった4ヶ月間でした。そして育児は、息つく暇のないマラソンのようなものだと感じたんです。そう妻に言ったら「トライアスロンよ」と言われましたが(笑)。でも、子どもたちとの精神的な距離は本当に密接になりました。子どもと一緒に平日に近所の散歩などをしていると、今まで関わりの少なかった近所の人にも顔を覚えてもらえますし、地域の大切さなども初めて感じました。昼間の育児の様子を妻に話しているときなど、育児ストレスに陥るお母さんたちの気持ちがなんとなくわかる気分でしたし。
こうした生活が続くなかで、父親が家庭や育児、地域への関わりが薄いことと、今子どもたちを取り巻く問題との関わりに気づいたんです。自分にとって何が大事なのかも考えさせられました。家族は比べるものもなく一番大事、でも今の日本の会社は父親を家族から遠ざけているのでは、と。大げさに言うと、育児休暇を取るまで懸念していた「会社」の存在って何なんだ?という気持ちですね。もちろん仕事は大事ですが、今までと違う働き方もあるのではないでしょうか。
仕事だけしていたら気づけないことを、たくさん感じることができたのも、育児休暇を取ったおかげです。育休を取ることによって失うものがあると思っていましたが、それは幻想でした。
育児休暇中の
平均的な生活
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5:00頃
起床、洗濯、朝食のしたく
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6:30頃
奥さま、長男起床
朝食後、奥さま出勤 -
8:00頃
長男を保育園へ見送り
長女の朝食後、掃除などの家事の後、長女と2人で近所をお散歩
お散歩後、長女お昼寝 -
12:00
昼食
昼食後、おうちで遊んだり遠出のお散歩
お散歩がてら夕食の買い物 -
16:00頃
洗濯物取り込み
夕食のしたく開始(子どもが寝てくれないとなかなかはかどらず) -
17:00頃
長男を保育園にお迎え
長男帰宅後は長男と遊ぶ時間 -
19:00
奥さま帰宅
家族揃って夕食 -
20:00
順番にお風呂
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21:00
長男に本を読んで寝かしつけ
そのまま一緒に寝てしまったり、奥さまと語りあったり
復職後1年が経過し、子どもが保育園で熱を出せば、奥さまと分担して早退することもあるという渡辺さん。「そういうときはコソコソせず、必要なことだからときちんと職場に説明します」。渡辺さんがそうすることで、きっと同僚や後輩が同じ状況になったときに、言い出しやすくなりますよね。「育休第1号」という気負いは全く感じられない渡辺さんですが、「誰かが最初にやらなければ、何も変わらない」という想いがひしひしと伝わってきました。